長屋紳士録

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小津安二郎が捕虜収容所での生活を経験し帰国して
作った第1作目、昭和22年の作品。

なんと日本語字幕入りであった。
それが聴き取れない台詞がよく分かりとても良かった。



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小津作品といえば笠智衆であるが、
この作品でいえば、始めから最後まで飯田蝶子に身を預けていればよし。
おたねさん、素晴らしいおばあちゃん、、、いえ、おばちゃん!

終戦まもない長屋が舞台。
笠智衆が九段で子供を拾ってくる。
正確には親とはぐれた子供が勝手についてきたのだ。

長屋の住人たちは子供を厄介なお荷物扱い。
子供は嫌いだよ、餓鬼はやだよ、の連呼である。
おたねさんに頼もう!と連れて行き、
「子供、いらんかね~」と若くてもあの調子である笠智衆。

おたねさんのおっかない顔。
シッ、シッ、と犬猫を追っ払う如く子供を嫌がる。
メッ!と怖い顔しても子供は怯まない。
無表情であるが、どこか憎めない石っころのような顔。

その夜、緊張したのか?子供はおねしょをしてしまう。
翌朝、敗戦で焼け野原となった東京の町並みがパーッと開けて見え、
その中で物干しざおにツギハギだらけの布団を干し、
「あおいで乾かしな」と年季の入ったうちわを子供に渡す。
まったく、まったく、、、と迷惑極まりない顔するおたねさん。







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くじで当たってしまったおたねさんは、子供を連れて茅ヶ崎まで父親を捜しに行く。
父親は行方知れず、海を見て浜辺を着物姿で走る(逃げる)おたねさん。
追う、子供。
逆に追っかけて追っ払おうとするおたねさん。
結局、、、また長屋に連れて帰る。

その夜、長屋の住人が集まり本当のくじで当たった振る舞い酒で乾杯。
笠智衆が「のぞきからくり」という芸?の歌を披露する。
髪が黒くて髭がある笠智衆は、なんだか加瀬亮に見えなくもない。笑

すっかり良い気持ちになったおたねさん。
まだ寝ていない子供に、「おねしょが心配なのかい?」と気遣う。
「おばあちゃん、おやすみ」
「おばちゃんだよ」
おたねさんは友人に、「こちこちの握り飯みたいな顔して睨むんだよ」と
ぼやくが、もうすでに子供のことが気になってる様子を感じ取り、
友人は「もう、あんた、あの子のこと好きになってるよ」と突っ込む。

動物園のシーンではすっかりおたねさんの表情が優しいものになっている。
「たぬき、いつ化けんの?」
「晩だよ」
「晩までここにいんの?」
短い台詞のやり取りだけど、とても2人の馴染み具合が伝わる。
子供に新しい服を着せて、写真館で記念写真を撮る。
本当の親子になるんだね、とこちらにもそう思わせる。






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楽しい1日が終わり、子供の小さな拳で肩を叩いてもらってるとき、
誰かが訪ねてきた。
そこには、、、子供のおとっつぁんが立っており、子供を探して迎えに来たのだ。
丁寧にお礼を言い、ジャガイモの気持ちも添えて、子供と共に長屋を後にする。
見送るおたねさん。
沈黙の後、ワッと顔を手で覆い泣きだすおたねさん。

ここからの台詞が素晴らしかった。
本当の親子になろうと思った矢先、子供を取られて悲しくて泣いたのではない。
うむーーーっ!
おたねさんの台詞から、昭和22年の大人だけでなくそれはもう、未来をも予想?
今現在のワタシ達にも深く深く伝わる言葉である。
が、どうしたら良いものか?現在のワタシ達はそう思っていても、
手の付けようがない、、、状態になっているような、いないような。
長屋に暮らす人たちの日常、突然現れたよそ者、
厄介なお荷物から情が生まれ、子供から人としての教訓を得る。
あ~、なんて良い映画!

最後に上野の西郷さんの銅像。
その下に戦争孤児となった子供達がたむろする。
おたねさんは一緒に暮らした子供に、
外から帰ってきたら手を洗わすなんてことなく
「ほら、おあがんなさい」とホットケーキみたいな(笑)ものを食べさせていた。
ずっと同じセーターを着ていて寝る時もそのセーターで、
なにかいるのか?痒そうに体を動かす子供。
外から帰宅したら、食べる前には、手を洗い口をゆすぐ、、、ということや
服と寝具や食べる部屋と寝る部屋の区別など、高度成長の頃から定着してきた
生活習慣なのだろうか、、、

戦後まもない、いや昭和までの子供達はなんだか逞しい。

小津映画で今まで好きな作品を上げるとしたら、
「東京物語」と言っていたが、勿論好きだが、、、
「長屋紳士録」を観た今、これが1番かもしれない。
「小津映画で、何がオススメ?」と聞かれたら、これと東京物語とこれから言うわ。

飯田蝶子さん、初めて観たけどもう忘れられない。


2014.No17   蠍座にて
by jog-daisuki | 2014-04-14 21:00 | 映画を観よう(た~は行) | Comments(0)
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